一般的に、年度のはじめや終わりのタイミングには、棚卸業務が実施されます。在庫の数量を数え、正確な在庫量を把握するための業務です。
棚卸業務は、複数の面で重要性が高い業務です。正確な在庫量を把握できれば、商品の保管にどれほどのコストがかかっているかを算出することができます。次年度に力を入れて売り込むべき商品や、反対にさほど購入が見込めないであろう商品もある程度知ることができ、仕入れの計画を立てやすいです。
企業のもっとも基本となる「売上総利益」は、「売上額-総仕入額-在庫分商品原価」の計算方法で算出します。正確な在庫量を把握できていない場合、在庫分商品原価にも違いが生じ、正しい売上総利益を計算できません。こういった面からも棚卸業務はしっかりと実施しなければなりません。
物流業界における棚卸業務の重要性
物流業界に関して言えば、在庫の多くは顧客から預かった製品や商品です。自社の財産ではなく、他者の財産であるため、棚卸業務の重要性はさらに高いでしょう。
また一般的な販売店舗などの棚卸業務に比べて、ミスが生じやすいのも特徴です。なぜなら、物流企業の在庫が保管されている倉庫や配送センターは、店舗に比べて遥かに膨大な量の在庫を有しているためです。商品の種類も、店舗の比ではありません。それだけの商品を保管している倉庫や配送センターでは、棚卸業務はとても大きな負担になります。ミスも発生しやすいため、より慎重な作業が求められます。
発生するミスの主なものは、数量の数え間違い(カウントミス)と言われています。業務自体がどれだけ早く終わっても、最終的にミスが発生していれば意味がありません。やり直しの際にいっそう時間がかかるでしょう。
カウントミスを減らすには
倉庫や配送センターで実施される棚卸業務には、2つの方法があります。1つは伝票を利用した「タグ方式」と呼ばれるもの、もう1つはリストと照らし合わせる「リスト方式」です。このうち、カウントミスが少ないのはタグ方式と言われていますが、タグの回収や確認が必要であるため、時間がかかります。
タグ方式を利用する場合、できるだけスピーディーに業務が進行するように様々な工夫が必要です。例えば専門店で販売されているようなスタッカーや台車など、運搬用のマテハン機器を利用すれば、在庫品の移動にかかる時間を大幅に削減できます。
リスト方式は比較的短時間で終わるものの、システム上での管理がうまくいっていない場合、カウントミスが生じます。ただし近年はシステムの利用が一般的になっていることから、システムの難点を補う工夫もされています。システムの選び方によっては、カウントミスの多さはそれほど気にならないでしょう。
いずれの方式を利用する場合も、棚卸業務におけるカウントミスを減らすためには、普段から在庫管理を徹底しておくことも大切です。各倉庫やセンターのルールに従い管理をすることで、ミスが減ることはもちろん、棚卸業務の負担自体も軽減されます。